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京都のお茶屋女将 武田伊久子さん 助けて!きわめびと もっと知りたい!フィーチャー“きわめびと”

もっとしりたい!フィーチャー“きわめびと”

「極意は“色を消して色を生む”」とお茶屋女将の武田伊久子さん

おもてなしの“きわめびと”に聞く、「また来たい」と思わせる方法

NHK総合

京都のお茶屋女将 武田伊久子さん 写真

<プロフィル>
たけだ・いくこ。1963年、茨城県出身。中学卒業後、京都にあるクラシックバレエ専門学校に入学。卒業後、知人の紹介で置屋に入り、修行を重ね、3カ月後に舞妓としてお披露目。35年もの間、芸歴を重ね、現在は京都五花街のひとつ、東山区宮川町でお茶屋兼置屋「花傳(かでん)」の女将として、店の切り盛りと舞妓・芸妓の指導、育成にあたる。

 視聴者からのさまざまな悩みについて、解決のヒントを探るNHK大阪発のドキュメントバラエティ「助けて!きわめびと」(毎週土曜日、午前9時30分~午前9時55分放送)。3月18日の放送では「パリのマダムが舞妓修行!?」と題し、番組初となる外国からの相談者が登場。そして、悩みを解決するきわめびとは、京都・花街のお茶屋の女将、武田伊久子さんです。

世界に通ずる日本のおもてなしを学ぶための舞妓修行

 創業90年を誇るパリの四つ星ホテル。数年前まではパリの街には観光客があふれ、ホテルも常に満室という盛況ぶり。しかし、パリ同時多発テロの影響で観光客が激減し、ホテルの予約もガラガラ。ホテルスタッフの士気も下がる一方。これまでの殿様商売のサービスが抜けない状況に、ホテル代表は「接客力を上げ、お客さまとスタッフとの関係を良くしたい。日本のおもてなしは、世界に通ずる規範となるもの。日本でおもてなしの根本を学んでほしい」と話します。そして、ベテランの接客係・マリーさんが、武田さんのもとで4泊5日の舞妓修行をすることになりました。

 武田さんは、花街の世界に飛び込んで35年。「お座敷の話術師」と呼ばれるほど、細やかな気配りと配慮を欠かしません。そんな武田さんが、マリーさんの接客シーンのVTRを見て「接客が分かっていませんね。お客さまを増やそうと思うのなら、一度来ていただいた方に、また来たいと思わせることが大事です」と指摘しました。

 武田さんによれば、花街の極意は「色を消し 色を生む」。つまり「自分の中にある固定観念や自我を消して白になり、相手の立場に立ってお客さまの色に染まるということです。自分がこういうふうにするというおもてなしでは、うまくいきません。マリーさんはお客さまに笑顔をみせることで信頼感や安心感を与えたいとおっしゃいますが、笑顔だけではお客さまの求めるものは分かりません」
 「自分の色を消すとは、自分の意見をなくすということか」というマリーさんの質問に、武田さんは「自分の意見は、ある一定の仕事ができた上で表現するもの。色を消すことで、サービスの表現の幅が広がります」とアドバイスしました。

 武田さんのサービスはどのようなものか、お座敷でのシーンがVTRで流れました。女性客との会話の中、琵琶湖畔の寺を訪ねたと聞いただけで、武田さんは軽めのアルコールドリンクを勧めます。「滋賀県はおいしい日本酒が多く、おそらくお食事と一緒に日本酒をめしあがってきたはず。ですから、飲みやすいものをお出ししたほうがいいと思ったのです。わずかな会話の中から、お客さまのことを知り、お客さまの気持ちになって考えることが、本当のサービスです」

固定観念や思いこみを捨てて相手に合わせていく

 フランスは個性を大事にする文化。それに比べて、色を消すという日本の文化の違いにマリーさんは戸惑います。武田さんは「色は個性とは違います。色とは偏った考えや固定観念、思いこみを捨て、相手に合わせていくというもの。個性は、そのあとで役立てるものです。私自身も花街に飛び込み、修行時代はひたすら色を消すことに努めました。経験があればあるほど、色を消すのは難しいもの。ですが、相手の立場になって相手と同じ気持ちになりきり、自分だとどう思うかを考えるのです」とアドバイスします。

 それでも納得のいかないマリーさんに対し、武田さんは、お客さまの立場でおもてなしを受け、体感してもらうという作戦を考えました。行きつけの着物雑貨店へ連れていき、足袋を試着。ここには、新品の足袋は一度洗うと縮んでしまうので、すでに洗って縮んだ状態のものを提供するという“おもてなし”がありました。「ちょっとした心配りは、日本では当たり前のことです」と武田さん。

 さらに、次はお座敷へ。ノドグロという魚は、のどが黒いからという話を聞いていたので、お頭の部分が食べられると思ったマリーさんの前には、尾の部分が出されます。その理由をたずねると、武田さんは次のように答えます。「お箸の使い方に慣れていらっしゃらないので、頭の部分より尾のほうが食べやすいと判断したからです」

 日本流のおもてなしを体感し、マリーさんは「おもてなしとは、相手を尊重し思いやる気持ち。それにプラスして、相手に何をしてあげられるかが大事だと分かりました。おもてなしとは人間味そのもの」。そして、舞妓修行を終えました。

相手の人生とリンクして一緒に楽しむこと

 武田さんは舞妓に憧れていたわけではなく、もともとバレリーナを目指し、京都のバレエ専門学校に入学。ただ、身長が低く日本舞踊の方が向いているかも、と思っていたそうです。そんなとき、仲良しの友人の家に泊まりに行き、置屋の女将さんを知っている友人の祖母から「舞妓さんになったらええのに」と言われました。そして、舞妓について知らないまま女将さんを紹介され、花街の世界へ入ることに。

 3カ月は見習い期間として修行を重ね、色を消すということを学んだそう。「自分なりに考えて行ったサービスを、おねえさん(先輩の舞妓・芸妓)やお母さん(女将)がほめてくれたんです。それがうれしくて、次もがんばろうと思いました。何より、お客さまが喜んでくださるのがうれしいですね」

 舞妓の世界は厳しく大変。「分からないことだらけで怒られることもありましたが、楽観的なのか、一度も辞めたいと思ったことがないんです」。女将になった今は、14、15歳の子を預かり育てていくという立場。「ご両親以上に、その子のことを理解しています。同じ道を歩んできた先輩として、何年か前に立ち返れば彼女たちの気持ちは分かりますから」

 また、ときには、厳しいことを言うこともあるそう。「親元を離れて出てくるので、ご両親にとっては心配でならないでしょう。だからこそ、ご両親の立場に立ってどうすればいいのかを考えるのです。道を踏み外しそうになったときには痛い思いをさせるかもしれませんが、私の手がガードレールになります、とお伝えしています(笑)」

 武田さんは相手の立場に立ち、どうすれば喜ばれるか、何を求めているかを自然と考える術を身に付けています。日々の生活の中で相手の気持ちが分からないと悩む人も多いでしょうが、「サービスやおもてなしは、お相手の人生とリンクして、一緒に楽しませてもらうことです。私たちのおもてなしは、できて当たり前のように思われていますが、お座敷に出るときはお客さまにくっついて、その方のすべてを覚えていく努力をした積み重ねで、無意識にできるようになりました。相手を分かろうとすれば、いつの間にかできるようになるはずです」

おもてなしの極意とは

固定観念や自我を消して、相手の立場に立つ

会話の中から相手を知り、気持ちを考える

相手を尊重し、思いやるのがおもてなし

4月からは金曜の「ごごナマ」でお悩み解決

「ごごナマ」

 4月7日(金)から、大阪発の「ごごナマ」がスタート。司会の西川きよしさん、濱田マリさん、藤井隆さんが、関西ならではの話題や笑いを届けてくれるほか、視聴者のお悩み解決コーナーもあります。
◆大阪発「ごごナマ」はNHK総合で毎週金曜の午後1時5分~3時放送。詳細はNHKホームページ(http://www.nhk.or.jp/)から「ごごナマ」で検索を。