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 和ごはんインタビュー 日本料理マナー・サービス研究所 所長 保田朱美さん

和ごはんタイトル

タイトル1
「和の文化が消えつつあることに危機を感じていた私にとって、“和食”のユネスコ無形文化遺産認定は念願。15~6年かかってようやく実現し、感無量でした」

と話すのは、日本料理マナー・サービス研究所の保田朱美さん。「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に携わった、和食マナーの第一人者です。

「認定を節目に引退を考えていました。ところが、そういうわけにはいきませんでした。ふだん、ホテルや料亭のスタッフ向けに、和食のサービスを教えているのですが“日本料理と和食の違いはなんですか?”と聞かれたり、若い仲居さんがお弁当をフォークで食べていたり…。もてなす方の和食の知識がなくて驚いちゃいました。2020年には東京オリンピックもあり、世界から注目が集まる中、これでは正しく和食を伝えられないですよね」

認定はゴール、ではなく新たなスタートだったという保田さん。80歳の今も全国を飛び回って和食を通したおもてなしの心を伝えています。本当は、和食の歴史もきちんと理解してほしいそう。

保田朱美さん

【プロフィール】
1934年生まれ。日本料理マナー・サービス研究所所長。八芳園をはじめ、全国のホテル、旅館、日本料理店のマナー・サービス向上のための指導や、学校や短大、一般向けに食卓作法のセミナー講師を行う。また、日本ホテル教育センターが実施する「和食検定」の監修や、日本ホテル・レストランサービス技能協会の講師認定試験委員を務めるなど、「和」の作法のエキスパート。

「会席料理・懐石料理・普茶料理・精進料理・本膳料理など、時代や場所に応じて多様な料理の形が生まれ、現在の和食につながっているのです。ちなみに、“会席料理”と“懐石料理”の違いはご存知ですか?お酒を飲みながら食事を楽しむのが“会席料理”。茶の湯で、茶人のおもてなしとしてふるまわれるのが“懐石料理”。お茶をおいしくいただくために食べるので、メインではないんですよ。まだ“懐石料理”と書いている料亭を見つけることがありますが、内容は会席料理なのです。そういった歴史をきちんと知っている人がどんどん少なくなっています。もしかしたら、私が最後の語り部じゃないか、って思うこともあるんですよ」

タイトル2

保田朱美さん

そもそも、今の日本人に和食の知識がない原因はどこにあるのでしょうか。

「家庭で和食について十分に学ぶ機会がなかったからですね。昔は家族で食卓を囲んで同じ料理を食べながら自然と箸の使い方や食事のマナーを学んでいました。ところが、今は食べる時間はバラバラ。一緒に食べるとしても、それぞれ違う食事なので親のしぐさを真似ることができないんです。

また、戦争を境に親から子に“おふくろの味”を伝えることが少なくなりましたね。戦後は食べ物がなく、作れるものが限られていました。その時代に育った人が、いざ母親になったとき、どうやって料理をしたらいいかわからないんです。さらに西洋の文化が入ってきて洋食がもてはやされたことで、子どもに“おふくろの味”として和食を伝えることが減りました」

時代も理由のひとつとは驚きです。では、これから家庭でどんなことをしたらいいでしょうか。

「3つ挙げるとしたら、まずは箸が正しく持てること。和食は、箸で食べることが大前提。箸を使いお椀を手に持つ食べ方は、日本の食文化のひとつです。また、箸の持ち方ひとつで人柄が判断されますよね。テレビで美しい女優さんが変な箸の持ち方をしているとそれだけでおいしくなさそうに見えます。

2つめは基本の膳組みを知ること。ごはんを左・汁ものを右・香の物を奥に三角形に置く、これが和食の基本の組み合わせです。ここにおかずを組み合わせて一汁三菜などの形になります。この形だけは絶対に崩してほしくないですね。日本はかつて“瑞穂(みずほ)の国”といわれた米文化の国。そして、発酵食品の文化がすばらしい。乳酸菌によってできる香の物もそのひとつです。味噌汁は、大豆の発酵食品・味噌、和食の大きな特徴であるだしを使う、汁ものとしてはずせない料理です。

そして3つめは、いただくときのマナー。食育について定めた食育基本法からはマナーの観点が抜け落ちています。これは非常に残念なこと。マナーには、作法としての側面もありますが、“いただきます”“ごちそうさま”と、食材に感謝の気持ちをもつこともマナーの要素のひとつです。これらを取り入れながら我が家の味を残し、伝えてほしいですね。

ユネスコには“和食;日本人の伝統的な食文化”として認定されました。つまり、“すべての日本人が実践する”ことなのです。実は、無形文化遺産は認定されてから数年後に再審査があるそうです。その時、和食は実践されているでしょうか」

今こそ日本人として自分の食を見直すときではないでしょうか。

(中富素子)

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