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スポーツ・バイオメカニクス研究者 深代千之さん 助けて!きわめびと もっと知りたい!フィーチャー“きわめびと”

もっとしりたい!フィーチャー“きわめびと”

脳が動きを覚える「運“脳”神経」をとなえるスポーツ・バイオメカニクス研究者の深代千之さん

スポーツ科学の“きわめびと”に聞く、運動と脳の関係

NHK総合

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<プロフィル>
ふかしろ・せんし。1955年、群馬県出身。東京大学大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。学生時代は三段跳びの選手だったこともあり、スポーツ・バイオメカニクスの研究分野へ。東京大学大学院総合文化研究科教授、日本バイオメカニクス学会会長。東京体育学会会長。著書に「運動も勉強もできる脳を育てる運脳神経のつくり方」「知的スポーツのすすめ」「運動会で一番になる方法」ほか。

NHK大阪発のドキュメントバラエティ「助けて!きわめびと」(毎週土曜日、午前9時30分~午前9時55分放送)。視聴者から寄せられた日々のお悩みに、「きわめびと」と呼ばれるその道の達人が解決へと導く番組です。

5月14日・21日の2週にわたって放送された「運“脳”神経で走力アップ!前・後編」に登場した“きわめびと”は、スポーツ科学の第一人者・深代千之さん。深代さんが研究するスポーツ・バイオメカニクスとは、力学や解剖学などの観点から身体運動をとらえ、理解と向上をはかる学問。2008年北京オリンピックの400mリレーで銅メダルに輝いた朝原宣治さんをはじめ、多くのスポーツ選手をスポーツ科学の観点からアドバイスしています。

頭でイメージするだけで速く走れるようになる

 春の運動会シーズンを前に、走るのが苦手だったり、もっと速く走りたいという子どものために、どうにかしてあげたいと悩んでいるお父さん、お母さんも多いのでは? 深代さんによれば、「走るためのトレーニングをしなくても頭でイメージするだけで、速く走れるようになる」といいます。「運動レベルを上げるには、動きのコツを脳にインプットすること。速く走るために必要な神経パターンを脳に格納すれば、必ず速く走れるようになります」
番組の中では、「鬼ごっこでいつもタッチされる」「選抜リレーの選手に選ばれたい」など、速く走りたいと希望する小学2年生から6年生までの9人が登場。2日間の合宿と1週間の自宅での練習で、動きのコツを頭にインプットし、1週間後にどれぐらいタイムが速くなるかの実験が行われました。

まず、「脳に速く走ることをインプット」するために、自分たちの走る姿と朝原さんの走る姿を映像で比較。「大きな違いは、朝原さんはかかとがお尻に付くぐらい足が上がっている点。そのためにはひざに力を入れるのではなく、股関節を大きくスイングさせ、太ももを引き上げることで素早く振り出すことができるのです」
その動きを脳に格納するため、足の模型を使ってイメージ。その直後に測定すると、のきなみタイムが早くなるという結果に。
「速く走るには、腕をふる、体をひねる、前傾姿勢、かかとをおしりに付けるなどの動きが必要。それを考えながら走るのはむずかしいですが、それぞれの正しい動きを脳に格納すれば無意識でできるんです。脳が動きを覚えれば、いつでもその動きができるもの。自転車に乗れるようになると、しばらく間があいても乗れるのも脳によるもの。よく、“からだが覚えている”といいますが、筋肉ではなく脳が動きのパターンを覚えているからで、私はそれを運“脳”神経と呼んでいます」

速く走るための動きを毎日少しずつトレーニング

 ほかにも合宿では、走ることに必要な体の動かし方を練習。たとえば、あおむけに寝転がり体をねじりながら床を進む、ガラスを拭くように両手で弧を描きながら肩甲骨を動かす、ボールのようにはねた子どもの肩を親が軽く押し、つま先で床を蹴るなどの動きが登場。
「朝原さんのようなトップアスリートも、このような動きを行ってから実際に走る練習やトレーニングを行うんです。毎日、少しずつでもやり続けることが大切。嫌々やったり、疲れるまでやるのではなく、親子で競争するなど子どもがおもしろがってする工夫も必要です」
また、走る動きのなかで、体をひねる、前傾姿勢の2つを脳に格納するため、番組では、カヌーと竹馬に挑戦。
まず、カヌーは体幹を意識しながらも体をひねってオールをこがないと前に進まないため、この体をひねる動きが、上半身をひねりながら手を振る動きに共通するそう。
竹馬は、前傾姿勢でないと乗れないもの。竹馬に乗れるようになれば、前傾姿勢が脳に格納されます。

合宿後はそれぞれ自宅で練習。楽しみながら、遊びながら体の動きを習得してほしいという願いから、飽きさせないための工夫も。そのひとつが、相撲の立ち合いです。「相撲の立ち合いは、スタートダッシュの動きに通じます。親にぶつかって通りぬけるようなイメージで立ち合いの練習をすれば、スタートの素早い動きが脳にインプットされます」

楽しんで練習すればできるようになり、動きのパターンが脳に格納される

 合宿と自宅での練習を経て、1週間後に再計測。9人のうち高学年5人がタイムを上げる驚きの結果に。「結果がでなかった4人は、低学年ばかり。練習の動きが、走るときのどんな動きにつながるかを頭の中で統合するには、低学年には時間がかかります。もう少し練習を続ければ、低学年でも速く走れるようになるでしょう」

今回の放送では走る動きに集中した練習が紹介されましたが、たとえばボール投げの練習にはどのような動きをすればいいのかも教えてもらいました。
「ボール投げが苦手なのは、ボールのリリースポイントとムチ動作がつかめていないんです。めんこ遊びはムチのようにしなやかに腕を動かし、めんこを離す動きがボールリリースと同じ。めんこのようにボールを地面にたたきつける、慣れてくればワンバウンドで投げる、という練習をすればいいでしょう。コマまわしも、スナップを効かせる点ではボール投げの動きに通じます」

スポーツの基本は、楽しんですること。本来は公園や自然の中を駆け回り、遊びの中で、体の動きを習得できることが、子どもにとって一番ですが、最近の暮らしではそのような場も減少しています。
そんな中、子どもが小さいうちから種目を限定し、スポーツに取り組むことが増えていますが、「小さい頃は種目ではなくスポーツの基本的な動き、走る・跳ぶ・投げる・打つなどを練習すべき。そのなかで得意なものを見極め、種目を選ぶほうがいいと思います」と深代さん。

もう一つ、よくいわれる「運動神経は遺伝」という話も、「思い込み」と言います。
「運動のうまい、下手は遺伝ではありません。練習すればうまくなり、できないことができるようになればおもしろくて、やる気になれば、どんどんうまくなります。そして、うまくできたことは前述のとおり脳に格納されますから結果へとつながるのです。スポーツ科学に基づいた体の使い方や練習は、子どもの脳や神経をぐんぐん活性化させるでしょう」

速く走ることと運“脳”神経の関わり

走るために必要な神経パターンを脳に格納すれば、必ず速く走れるようになる

速く走るには、腕をふる、体をひねる、前傾姿勢、かかとをおしりに付けるなどの動きが必要。それぞれの正しい動きを脳に格納すればいい

脳が動きを覚えれば、いつでもその動きができる。それは、筋肉ではなく脳が覚えているから

正しい動きを身につける練習は、毎日楽しんで続けることが必要

運動神経は遺伝ではなく、必要な動きがどれだけ脳に格納されているかによるもの

5月28日放送の“きわめびと”はスーパー主婦・足立洋子さん

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 1月に放送された「献立名人になりたい」の再放送。台所に立つと何を作ればいいか悩むという“献立うつ”の相談者へ、スーパー主婦・足立洋子さんが、献立を生み出す「五法の表」を伝授します。
アドレスはコチラ ⇒ http://nhk.jp/kiwamebito