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冬期の「自然室温」は上げられる?【Re Re 快適のヒミツ】

冬期の「自然室温」は上げられる?【Re Re 快適のヒミツ】

 快適な湿度や温度が住まいの居心地を大きく左右します。リフォームやリノベーションでも湿度や温度を意識しましょう。近畿大学建築学部学部長・教授の岩前篤さんに、快適な空間づくりに大切なコトを教えてもらいます。

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Lesson10

低温は万病のもと

「寒さ」ではなく「低温」に注意

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 先月の続きです。おうちの断熱性が高いほど、お住まいの方々の健康性が高い可能性があることを、調査結果からお示ししました(参照:Lesson9)

 断熱性の高い住まいの最大の特徴は、「冬、家の中の温度が高い」ということです。

 冬期、私たちの屋内の暮らしでは二種類の温度があります。エアコンやヒーターを運転している部屋の「暖房温度」と、廊下やトイレ、あるいは明け方の寝室など、暖房器を使っていない部屋の「自然室温」です。

 暖房温度は生活習慣に依存するので、家の断熱性はあまり関係しませんが、自然室温は断熱性が大きく関係します。関西では、トイレの自然室温は低い家で5°C程度まで下がります。断熱性を高くすると、同じ場所でも12°C以上に上がることもあります。

 かゆみや喘息などの諸症状は、断熱性が高いほど出なくなる傾向があり、高断熱の特徴は自然室温の上昇なので、私たちは「低温は万病のもと」と考えています。

 気にしたいのは「寒さ」ではなく、「低温」です。低温とは、体が低い温度にさらされていること。寒さとは、この状態を心が認識したことです。

 一般に、寒さを感じると何らかの対策をします。服を重ねたり、暖房をつけたり、あるいは温かい部屋に移動したりと。

 寒さを感じたまま暮らしている人は極めて少数と考えられますので、寒さが健康に影響していることは実際にはかなり少なくなります。

 低温は異なります。ふだんの暮らしのなかで、気づかずに体を冷やしていることは少なくないと思います。夢中になって本を読んでいた、TV映画を見ていた、気づけば体が冷え切っていた、酔っぱらって床で寝ていた(筆者に多いことですが)など。

 最も影響が多いのは、寝ている間です。意識が明確にはありませんから、寝ている間に寒さを意識している人はいませんが、体は低温にさらされています。布団にしっかりくるまっていても、呼吸によって低温の影響を受ける可能性があります。

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冬期の「自然室温」を上げると健康度が向上

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 日本では、寒さをガマンすることが美徳とされていたり、健康面でも暖かくしすぎると体が弱り、風邪をひきやすくなる、という考えも少なくありません。

 欧米では低温による健康障害は常識であり、世界保健機関WHOの公式報告書でも明記されています。英国では独自の調査により、室温が低いことで高血圧などの6つの症状が増加することが示され、国の公式見解として「暖かい部屋で暮らす」べし、となっています。

 日本と暖房に関する暮らし方が似ているニュージーランドでは、20年ほど前から低温の健康影響に関するさまざまな実態調査が行われています。1350件を対象とした大規模調査では、断熱性を高め、冬季の室温を上げることで居住者の健康度が向上することを導き出しています。あるいは、12°C以下の寝室で寝ている子どもに喘息の発症率が高いこと、室温を上げることで改善されることも報告されています。

 暖かく暮らすことで、体力が弱る、免疫力が低下する、という研究報告は存在していません。閉め切ることが多いので、感染症が増える、という報告はありますが、免疫力が低下するわけではないようです。

 近年の欧米では、住宅の省エネ性能が以前に比べ段違いに高くなっていますので、彼らが家全体を冬中暖房するのに使用するエネルギーより、日本で寒さをガマンしながら、ときどき暖房器具を使うエネルギーの方が多くなっています。

 日本の暮らしは、ヒトにも地球にも優しくなくなっているようです。

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Profile
近畿大学建築学部長・教授 岩前 篤さん

1961年和歌山県生まれ。1984年神戸大学工学部卒業。1986年神戸大学大学院工学研究科修了。同年住宅メーカー入社。住宅の断熱・機密・防露に関する研究開発に携わる。1995年神戸大学で博士号(工学)授与。2003年に退社したのち、近畿大学工学部建築学科に助教授として就任。2009年同教授、2011年に新設された建築学部の学部長に就任し、現在に至る。建築環境システム研究室で、建築物内外の温熱・湿度・空気環境とエネルギーについて研究中。

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