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vol.2 世界で注目される日本独自の漢方医療とは…
- 2015/02/16 UP!
このコラムでは、女性医療ジャーナリスト・増田美加の視点で、女性の医療やヘルスケア分野で話題になっている最前線の情報をお伝えしています。
連載2回目の今回は、「漢方(Kampo)」についてです。
日本の漢方医療は、中国のそれとは異なります!
漢方(Kampo)は、日本独自の医療であることをご存知でしょうか?
「中国発祥の医療では?」という方もいらっしゃると思いますが、日本の漢方医療は中国や韓国のそれとは異なるのです。
5世紀ころ、中国から伝わった伝統医学をもとに、日本で“独自に”進化したものが今の日本の漢方医療(英語でKampo)です。
現在、保険で認められている医療用漢方薬は148種類。
日本では、漢方薬は西洋医学の免許をもった医師が処方します。ここが大きな特徴です。中国では、漢方は中医が行い、西洋医は漢方薬を扱いません。
また、日本では薬剤師が漢方薬を処方することも許されていますが、薬剤師の処方は健康保険が使えず、自費となります。「漢方薬=高い」というイメージはここから来ているのです。しかし、医師の処方箋があれば、漢方薬は健康保険で比較的安価に入手することができます。西洋医学の治療や西洋薬と併用することも可能です。
写真はイメージです
写真はイメージです
日本では、漢方薬が、西洋医学では治療できない、もしくは治療する範疇にないさまざまな不調に効くことから、おもに未病対策として用いられてきています。その代表的な症状は、みなさんもご存じの「冷え」ですね。
そのほか女性の不調に多い、「便秘、下痢、腰痛、吹き出物、落ち込み、不眠、イライラ、頭痛、だるい、疲れる、むくみ、肩こり、頻尿、尿漏れ、胃もたれ、胃痛など」にも漢方薬は、よく効きます。
また、「生理痛、生理不順、PMS(月経前症候群)、更年期障害など」にも効果があります。とくに、PMSや更年期障害は、漢方薬の得意分野といってもいいでしょう。
これらの不調にどんな漢方薬がいいかは、私が主宰する「NPO法人 みんなの漢方(R)」のWEBにまとめてありますので、よろしければご覧ください。
さらに現在、漢方薬は、がん治療の副作用対策としても有効性が証明され、抗がん剤などと併用することで多くの成果をあげています。
米国FDAの大規模試験でも有効性が実証されています!
「漢方薬は、西洋薬ほどよく効かない」「長く飲まないと効かない」「体質改善のための薬」と思っている人も少なくないと思います。また、「エビデンス(科学的証拠)がない」と思っている医師や専門家もいます。
でも、それは誤りです。
症状によっては、西洋薬よりよく効くものもありますし、1包で即効性がある漢方薬もあります。長期間服用して体質改善をしていく処方も得意ですが、頓服的に1包で効く処方も少なくありません。
たとえば私は、今日は「ぐっすり眠りたい」という日だけ、「抑肝散」という漢方薬を飲みます。また、講演などの直前に飲んで、“あがり”防止にも役立てています。
漢方薬のエビデンスについてですが、長年、「漢方薬はなぜ効くのか?」というメカニズムについての大きな謎がありました。
その謎をエビデンスによって解明しようとする試みが、薬理学者の上園保仁先生を中心に始まっています。2013年、テレビ番組でも上園班の功績が放送されました。
日本の漢方薬を国際標準にした上園保仁先生
独立行政法人国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野分野長。薬理学者。6年前、同研究センターで漢方薬の研究チームを立ち上げ、がん治療のつらい副作用に漢方薬を利用して生活の質を上げる研究を開始。厚生労働省の研究班班長として、国の取り組みの中心的存在です。
「118種類の生薬(薬効をもつ植物や鉱物)をさまざまな組み合わせと割合で調合する漢方薬は、西洋医学の限界を打ち破る可能性を秘めています。その効果に、米英のトップ医療機関が大きな関心を寄せています」と上園先生は言います。
米国の医薬品認可を行うFDA(食品医薬品局)が漢方薬を臨床開発治験薬として認め、英国では2014年よりオックスフォード大学が漢方薬の研究を開始しています。
日本独自の漢方医療が今、世界の注目を浴びています! 日本の優れた医療技術や医療機器を世界にアピールしようという日本政府の動きもあり、成長戦略のひとつとして安倍首相も漢方医療を世界に知ってもらおうと乗り出しています。
世界が注目する! エビデンスのある漢方薬
最後に、エビデンスレベルの高い漢方薬の代表を4つだけご紹介します。
「大建中湯(だいけんちゅうとう)」
術後の腸の運動をよくして腸閉そくを予防します
大腸がんの手術後に起こる合併症として腸閉そくがあります。従来、便秘や腹部膨満感に効果のある「大建中湯」を手術翌日から服用。腸管運動が促進され、腸閉そくを抑制。生薬がどのように効くかのメカニズムも解明されました。米国の大規模試験でも、その効果が明らかになっています。
「六君子湯(りっくんしとう)」
胃の調子を改善し食欲不振を改善します
胃炎、胃腸虚弱によく使われる漢方薬。抗がん剤治療によるつらい副作用、吐き気やおう吐によって治療が続けられなくなることを防ぐため、「六君子湯」を使用。抗がん剤による副作用である食欲不振の改善にも有効であることが、その薬理効果のメカニズムからも証明されました。
「抑肝散(よくかんさん)」
認知症対策とイライラ、不眠にも
従来からイライラや神経の興奮、不眠症、小児夜泣きなどに使用されてきました。認知症が進行すると起こる、妄想、幻覚、興奮、抑うつ、暴言などの症状にも有効であることがわかっています。2013年に、漢方薬の中で最も高いレベルのエビデンスがあることが発表されました。
「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」
抗がん剤による口内炎や下痢、消化不良に
抗がん剤治療を受けると免疫力が低下、口内炎ができて、ひどく痛み、食べるのが難しくなることが多い。副作用によって抗がん剤治療を中止せざるを得ない場合も。下痢や消化不良に効果がある「半夏瀉心湯」を水に溶かし、口をゆすぐ。すると口内炎の治りが早いことが、臨床試験で明らかになっています。
増田美加(ますだみか) 女性医療ジャーナリスト。女性のための健康&医療の執筆、講演を行う。女性誌でヘルスケアやアンチエイジングの連載を執筆するほか、テレビ、ラジオでも活躍中。最新刊に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)ほか著書多数。NPO法人「みんなの漢方」代表 http://www.mkampo.net/、CNJ認定「乳がん体験者コーディネーター」
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