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甦った戸定邸庭園 松戸市

甦った戸定邸庭園 松戸市

徳川昭武の思いを未来へつなぐ

 JR松戸駅東口から徒歩10分の高台にある戸定邸(とじょうてい)とその庭園。明治時代の大名華族の生活様式を伝える歴史的文化財として、松戸市内外の多くの人に親しまれてきました。松戸市は、庭園の往時の姿を忠実に再現し、その歴史的価値を後世により正しく継承しようと復元に着手。今年3月に約2年をかけた工事が完了し、6月に一般公開されました。復元の意義や見どころについて戸定歴史館館長・齊藤洋一さんにとことん聞いてきました。

園内を案内してくれた齊藤さん

この地に居を構えた徳川昭武とは

戸定邸は水戸藩最後の藩主だった徳川昭武(あきたけ、1853~1910年)が戸定(地名)に建てた私邸です。昭武は水戸徳川家9代藩主・斉昭の18男として生まれました。江戸幕府最後の将軍・慶喜(よしのぶ)の16歳下の実弟に当たります。
1867年、13才の若さで慶喜の名代としてパリ万博に派遣され、ヨーロッパ各国を訪問。明治維新により帰国、水戸徳川家を継ぎ水戸藩主に就きましたが、ほどなく版籍奉還を経て水戸藩知事になります。1871年の廃藩置県により知事職を解かれた後は、東京に居住していました。
松戸は狩猟でたびたび訪れた場所。1882年ここに住まいの建設を始め、1884年に完成させました。これが戸定邸です。兄の慶喜も後に幾度となく訪れています。

戸定が丘歴史公園入口。茅葺門が迎えてくれます

戸定邸玄関口両脇にヒヨクヒバの古木。「ダイナミックな枝ぶりが邸の威厳を感じさせつつも、客に威圧感を与えない絶妙なバランスです」と齊藤さん

庭園を往時の姿に

戸定邸の屋敷と敷地は1951年、市に寄贈されます。市は約40年間、公民館として利用後、戸定が丘歴史公園として整備し、1991年に一般公開しました。当時の建築をとどめる戸定邸は2006年、国の重要文化財に指定されます。また、芝生が屋敷の軒下まで敷き詰められた庭園は、現存する最古の洋風庭園とも言われ、2015年に旧徳川昭武庭園として国の名勝に指定されました。
しかし庭園には、年月の経過とともに、地形の改変、樹木の消失などによって作庭当時の姿が変わったり、別の用途に供されたりした部分がありました。そこで市は2016年、庭園整備に着手しました。齊藤さんは「単なる整備ではなく忠実に復元することに注力した」と話します。作庭に携わった昭武の思いや時代背景をより正しく伝えようとする取り組みでした。

広々とした芝生の向こうに戸定邸が

戸定邸表座敷廊下から書院造り庭園を望む

昭武が植樹した木立を再現

戸定邸に面した「書院造り(しょいんづくり)庭園」では、庭園東側のコウヤマキの木立と西側のアオギリの木立を再現。昭武は、高さ15mもある巨木でかつ円錐樹形の美しいコウヤマキを全国各地から運び、東側の芝生の縁に添って8本植樹していました。工事では失われていた4本を補植。今は7~10メートルほどの高さですが、数十年後を見据えて剪定や手入れを続け、昭武がデザインした木立に育てていく考えです。
アオギリは10本を植栽。「中国では鳳凰が止まる木といわれていました。この庭の風情にふさわしい高貴さがあります」と齊藤さん。
また、芝生面を調査したところ、当時の地面は約10cm下にあったことがわかりました。そこで、その深さまで土を削り、芝生を敷き直しました。こうして、土地の起伏や木立とのバランスが回復されました。

客間から見た書院造庭園のコウヤマキの木立。補植された4本のうち1本は市民からの寄贈

庭園西側のアオギリ

富士山を望む東屋も元の場所に

書院造り庭園の南側にも、もう一つの庭園が広がっていました。東屋(あずまや)があり、昭武らが富士山の眺望や桜の花見を楽しんでいました。この場所には福島県学生寮が建っていたのですが、市は2013年に使用されなくなったその建物と敷地を買い取ります。今回の工事で建物を解体、改変された地形を元に戻し、「東屋庭園」として造園しました。
再現された東屋も、見晴らしがよいことに変わりありません。眼下にJR常磐線と松戸市街を見渡せます。天候の条件がよければ、ビルの向こうに富士山が見えるとか。

小路の続く東屋庭園

眺望を楽しめる東屋

昭武の趣味が貴重な資料に

復元工事では、当時にはなかった木や飛び石を撤去したり、庭園内の通路や飛び石の配置を当時に戻したりしたりと、細かな作業も行われました。そのために役立ったのが、昭武が撮影した写真です。
昭武はまだカメラが希少で高価だった時代に関心を持ち、1,500枚以上の写真を撮影しています。その中に戸定邸を記録するものがあり、正確な復元に大きな役割を果たしました。甦った庭園を前に、齊藤さんは「大名家の歴史を受け継いだ品の良さと若くして渡欧した昭武のハイカラな嗜好がミックスし、どこか心和む景観です」と語ります。

「芝生の上で昭武や家族が遊ぶ様子や、客を招いて開かれた催しの光景を思い浮かべてみてください」

松戸の宝を後世に伝える

入館者数をみると、今年4月から10月末までで約4万人。前年同期と比べて約1.5倍となり、庭園整備の効果がうかがえます。また、同期間の総入館料は約520万円で、整備に伴い若干値上げしたこともあり、同比約2倍に増えました。
一方、「庭園復元はこれで終わりではありません」と齊藤さん。携わる人々が交替しても方針が変わることがなく、今後数十年、あるいは百年と時代を超えて一貫したものとなるよう、市は現在「戸定邸保存活用計画(庭園編)」の策定を行っています。
園内にある戸定歴史館では、12月24日(月・祝)まで企画展「明治150年 『忘れられた維新 静かな明治』」を開催中。昭武の来訪を伝えるフランスやイギリスの新聞紙面や、きれいな筆記体のフランス語で個人的感動が綴られた滞在日記などを見ることができます。齊藤さんは「昭武はヨーロッパ各国でプリンス・トクガワと歓待され、次期将軍とも見られていたほどの存在でしたが、残念ながら日本ではあまり知られていません」と言います。明治維新という歴史の大きなうねりの中にあって、西洋文明を肌で感じながらも静かに暮らした大名華族の一人に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

戸定歴史館は昭武と慶喜の遺品などを所蔵。年間通じて各種展示が行われています

外国人観光客に対応するため、パンフレットは8か国語を用意。日本語、英語、韓国語、中国語に加え、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語も。「昭武が訪れたヨーロッパを意識しました」と齊藤さん

施設内の解説板や看板についているQRコードは、スマートフォンなどで読み取ると、8か国語の文字情報や音声ガイドが利用できる仕組み


松戸市教育委員会生涯学習部 戸定歴史館
松戸市松戸714-1、TEL:047-362-2050
https://www.city.matsudo.chiba.jp/tojo/
■開館時間
9:30~17:00(入館は16:30まで、戸定が丘歴史公園は9:00~17:00)
■入館料
(一般)戸定邸250円、歴史館150円、両施設共通入館は320円。団体、高校・大学生、70歳以上市民割引あり。中学生以下無料。毎月5の倍数の日(戸定の日)のみ、戸定邸入館者は書院造り庭園に下りて散策ができます。戸定邸と歴史館以外の戸定が丘歴史公園内(東屋庭園を含む)は無料
■休館
月曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日。歴史館は展示替えのため臨時休館あり

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