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ちゃんと知って応援したい 北海道産小麦の話

  • 2018/09/12 UP!

ちゃんと知って応援したい
北海道産小麦の話

 北海道は小麦の大産地。道産小麦のパンや麺もすでに身近な存在で、「ハルユタカ」「春よ恋」「ゆめちから」といった品種の名前もおなじみです。
最近は全国的にも人気が高く、農家と首都圏のパン職人の交流など、新たな動きも出てきています。今回は、おいしく食べていながら意外に知らない、北海道産小麦の話を紹介します。

文・構成/五十嵐知里 取材協力/北海道農政部、ホクレン、江別製粉ほか

国産小麦を取り巻く状況

第2の主食ながら、自給率は14%止まり。
需要に合わせた供給も課題です

 国産小麦の6割のシェアを誇る北海道産小麦。一大産地として知られる十勝・オホーツク地方をはじめ、江別市や当別町、新篠津村など、札幌近郊でも栽培されています。道内の小麦需要の約5割は北海道産小麦でまかなわれており(注)、やはり身近な存在といえます。

まずは、国産小麦を取り巻く状況から見ていきましょう。国民1人当たりの小麦の年間消費量は33・1㎏。米54・2㎏の6割に達し、日本人にとって第2の主食といえます。ところが自給率は米96%、小麦14%。小麦の方は主食としては心もとない数字です。これから先、新興国との食料調達競争や輸出国の輸出規制など、食料の輸入に不安要素が見られる中、小麦の自給率の引き上げは、一層重要な課題となっています。
小麦全体の需要を用途別に見ると、「パン」が最も多く、次いで即席麺などの「その他麺」、「菓子用」、「日本麺」と続きます。それぞれの自給率は「パン」「中華麺」「その他麺」が低く、需要が多い用途で特に輸入に頼っていることが分かりますね。この用途は、小麦に含まれるタンパク質の含有率によって決まります。小麦には「硬質小麦」と「軟質小麦」があり、一般的にタンパク質の含有率が高い硬質小麦が強力粉に、含有率が低い軟質小麦が中力粉や薄力粉に製粉されます。小麦粉に水を加えてこねるとタンパク質はグルテンに変化しますが、パンや麺に弾力を与えるのがこのグルテン。国内ではこれまで、うどんやそうめんなど日本麺に使われる、軟質小麦を中心に栽培されてきました。今後は硬質小麦の作付けを増やし、パンや中華麺の自給率を引き上げることが求められているのです。

(注)道内における道産小麦の製粉量/道民の小麦需用量

平成29年度食料需給表(農林水産省)
小麦の用途別の需要

道産小麦の歩みとこれから

「ハルユタカ」に始まり「ゆめちから」で加速
まく時期の工夫も功をなしました

 小麦はもともと、中央アジアの高原地帯を原産とし、アメリカやオーストラリアなど、雨の少ない地域で栽培されてきた作物。日本の湿潤な気候には向かず、例えば収穫の時期に雨に当たると品質が落ちるなど、天候不順によるリスクが高いのが難点です。他の作物と比べて面積当たりの収益性が低いのも問題。加えて、毎年同じ畑で作るとうまく育たないため、2〜4年に1回の「輪作」が必要。日本の気候では作りにくい作物といえます。そこで、この〝作りにくさ〞の改善とタンパク質量の多い品種の育成を目指し、道内の各農業試験場で交配が繰り返されてきました。1品種につき10〜20年とされる地道な研究の結果、北海道には多くの品種が生まれました。
1985年に登場したのは「ハルユタカ」。パンが作れる国産小麦として全国に名を馳せた品種です。ハルユタカの栽培の難しさを改良したのが「春よ恋」。そして2009年に登場した「ゆめちから」は、タンパク質量が非常に多い待望の品種。ゆめちからの小麦粉を他の小麦粉に混ぜることでタンパク質量を引き上げられるようになり、道産小麦の用途が一気に広がりました。
人気品種のハルユタカでは、種のまき方の工夫も功を奏しました。小麦には、春に種をまいてその年の夏に収穫する「春まき」と、秋にまいて翌年の夏に収穫する「秋まき」があります。一般的にタンパク質が多いのは春まきの品種ですが、収穫時期に悪天候になりやすく、収量も伸びないのが悩みでした。ある江別の農家が晩秋の雪が降る直前にまいてみたところ、丈夫に育つ上に収量が増えることがわかったのです。「初冬まき」として現在も用いられています。

初冬まきの麦(左)は、春まきより生育が早く丈夫に育つ(提供/道総研中央農業試験場)

地域一体となって応援する取り組みが
全道各地に広がっています

 収穫された小麦は農協などに集められ、製粉会社に渡って小麦粉になり、小麦粉はさらにパンや麺などに加工されます。ほかの農作物と比べて加工の段階が多いのが特徴で、この加工に携わる企業や団体も道産小麦の普及に尽力してきました。
よく知られているのが「江別製粉」です。産地に社屋を構える製粉会社として、いち早く道産小麦に着目。1980年代から栽培方法の研究や商品開発を手がけてきました。同社が2004年に導入した「オーダーメイド小麦粉生産システム『F‐ship』」は、加工に必要な小麦の量を従来の25分の1まで低減。これによって農家や地域単位の製粉が可能となり、農家や農協が作りたい小麦を作ることを応援する仕組みが作られました。また、「初冬まき」の普及のために専用の農機具を購入。農家に貸し出す支援も行いました。このように、農家と製粉会社、製パン会社などが協力しあう取り組みは、十勝やオホーツク地方でも見られるようになりました。
また、道産小麦を地元で消費しようという活動も盛んです。北海道が2009年から始めた「麦チェン」事業はおなじみですね。最近は同事業のロゴをスーパーやコンビニなどでも見かけるように。パンのほか、焼きそばや肉まんなどにもジャンルが広がり、一層身近になりました。一方、ホクレンが北海道製麺協同組合と一緒に進めているのが「おまち道産」。道産小麦100%の中華麺やうどんに目印をつけて、販売促進につなげようという取り組みです。

全国の製粉会社が購入を希望する道産小麦の量は、3年前から販売予定量を上回っており、道産小麦の人気は今後も続くことが予想されています。この人気に産地はどう応えるか、そして、この人気を地域の活力にどうつなげるかが、これからの課題となっています。産地ではもうすぐ「秋まき」の作業が始まります。身近に暮らす私たちも、道産小麦を使った商品を選ぶことで応援できるといいですね。

江別製粉の「F-ship」(左)は1フロアに収まる大きさで、小麦1tから製粉可能。標準的な製粉プラント(右・緑の建物部分)は、5階建て相当で、小麦25tが必要

「麦チェン北海道」のロゴ。これが付いている商品は道産小麦100%
「おまち道産」のロゴ。道産小麦100%の麺の商品に付けられる。赤(左)が中華麺、緑は日本麺

生産者の声

使い手と直接交流して人生が変わった
この感動を他の農家にも伝えたい

 小麦は畑で採れたものをそのまま食べるものではないので、自分たちが作った小麦が、どこでどのように食べられているのかが分かりにくい。分からないまま作り続けている農家が大半だと思います。
そんな現状を変えたいと、2009年から始まったのが「北海道小麦キャンプ」です。全国から参加者を募り、小麦畑や地元の製粉工場を見てもらうほか、第一線で活躍するパン職人やパティシエを招いてパンやお菓子作りの講習をしてもらいます。初めてこのイベントに参加した時は、首都圏の有名店の職人が自分たちが作った小麦でパンを焼き、多くの人を魅了する様子を目の当たりにして、人生が変わるほどの衝撃を受けました。道産小麦が注目されていることも、作り手にはなかなか実感できません。これからも使い手と積極的に交流して広く発信し、できるだけ多くの農家に、自分が感じた感動を共有してもらえたらと思っています。

竹原宏太郎さん

小麦農家
竹原宏太郎さん

小麦の一大産地・オホーツクエリア(津別町)の小麦農家。後継者不足に悩む地域内の農家が集まり、共同で作業する有限会社すばる取締役。「2018年北海道小麦キャンプ」副実行委員長を務める

パンと麺、作り手の声

製麺組合

ラーメン人気も上昇中。海外も視野に入れ、味に磨きをかけています
北海道は日本麺用小麦の栽培が盛んで、うどんやそうめん、ひやむぎは、道産小麦を使ったものが市場に出回っています。食感のなめらかさやもちもちした食感が支持されており、道外でも人気です。
一方中華麺は、かつては外国産に比べて味が落ちるといわれていましたが、最近は小麦の風味や味わい、コシのある食感が認められ、少しずつ人気が出てきました。全道各地の製麺会社が地元産小麦を使って特徴のある麺を作り、道の駅や土産物店、インターネットなどで販売しています。海外市場も視野に入れ、味はどんどん磨かれていますから、一度味わってみてください。「おまち道産」も始まり、組合に参加している多くの企業で道産小麦の商品を作るようになりました。店頭にたくさんの商品が並ぶよう、皆さんも応援してください。

北海道製麺協同組合 平美蓮さん
道内の製麺会社による北海道製麺協同組合の事務局。道産麺の開発やPRにも努める。自身が手がける「麺カフェ乙人」は、同組合のアンテナショップ的役割も担う

さっぽろオータムフェストに
「おまち道産」の麺が登場

9月14日(金)~18日(火)、「さっぽろオータムフェスト2018」に北海道製麺協同組合が出店(西8丁目会場)します。道内各地の「おまち道産」のラーメン、うどん、焼きそばなどを販売する予定です。(北海道製麺協同組合 TEL 011-522-5015)

パン講師

首都圏の若手職人らも道内農家と交流。地元でももっと応援したい
ドイツではライ麦パン、フランスではフランス小麦を使ったバゲットと、ヨーロッパでは地元で採れる小麦を使ってパンを作り、それを主食としています。これまで日本のパンは、外国産の小麦を使って、外国で確立された方法で作られてきました。せっかく北海道でパンに向いた小麦が作られるようになったのですから、その小麦の特性を生かしたおいしいパンを考えるのが、作り手の役割。多くの職人が創意工夫を凝らしており、これからどんどんおいしい道産小麦パンが作られていくと思います。
道産小麦は道外からも注目されています。首都圏を中心に気鋭のパン職人たちが「新麦コレクション」というプロジェクトを行なっています。彼らは毎年のように道内の小麦農家を訪れて交流し、採れたばかりの麦でパンを焼いて販売しています。道内でももっとそんな取り組みが広がればいいなと思っています。

アトリエ タブリエ主宰 森本まどかさん
道産小麦を使ったパン作りを教える。著書に「北海道の小麦でパンを焼こう」がある。道内外の“超”有名店の職人との交流も深く、教室で彼らの講座も随時開催

家庭用の製パン小麦粉や
道産酵母も作られています

「わたしのパン」(1kg742円)は、配合が難しい道産小麦パンを、家庭で気軽に作れるよう考えられた製パン用小麦粉(橋谷札幌本店 TEL 011-892-4221)。一方「とかち野酵母®」(100g、500g共にオープン価格)は、十勝地方のエゾヤマザクラのさくらんぼから取った「野生酵母」。発酵力が強く、幅広い用途に使えます(日本甜菜製糖 TEL 011-261-6145)。

ますます身近な道産小麦を使った商品

※2018年8月時点。小麦の収穫状況などによって、道産小麦ではなくなることがあります

●敷島製パンが地元農協とタッグ
道産小麦100%のパンが続々

道央農協と共同で「ゆめちからプロジェクト」を推進中のPasco(敷島製パン)。道産小麦を使ったパンが続々と登場しています。下記は左から、「超熟北海道」「同 ハース」「同 イングリッシュマフィン」。いずれもオープン価格。

●あの北海道銘菓も、道産小麦です
・白い恋人(ISHIYA)
・三方六(プレーン)(柳月)

・北海道ミルククッキー 札幌農学校(きのとや)

●コンビニでも、「麦チェン」のオリジナルパンがいろいろ
左列上から「小麦香るもちふわ食パン」(118円)、「チーズオニオンブレッド」(148円)、「バナナホイップ入りもちふわパンケーキ」(108円)以上セブンイレブン。右列上から「ちぎれるミルクフランス」(130円)、「チーズとハムマヨネーズパン」(120円)、「しっとり豆パン」(123円)以上ローソン

●中華麺も、徐々にスーパーでも見かけるように
左列上から「小麦香るもちふわ食パン」(118円)、「チーズオニオンブレッド」(148円)、「バナナホイップ入りもちふわパンケーキ」(108円)以上セブンイレブン。右列上から「ちぎれるミルクフランス」(130円)、「チーズとハムマヨネーズパン」(120円)、「しっとり豆パン」(123円)以上ローソン

西山製麺
「北海道小麦麺2食」(214円)
望月製麺所
「シシリアンルージュのトマトラーメン2食入り」(515円)

 

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