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私たちにどう関わりがある?
農林漁業の6次産業化

  • 2019/10/10 UP!

私たちにどう関わりがある?
農林漁業の6次産業化

最近、よく耳にするようになった「6次産業化(6次化)」という言葉。簡単にいうと、生産者が自ら加工・販売まで行い、利益向上を図る取り組みです。しかしこれによってどのようなメリットがあるのか、一般消費者には分かりづらい部分もあるのではないでしょうか。本特集では、6次産業化とは何かを理解するとともに、身近な事例を挙げ、私たちの生活との関わりについて考えます。

構成・文/松崎聖子、イラスト/中田紘子
取材協力/農林水産省 北海道農政事務所、井上嘉文(エモーショナルトライブ代表)

生産ー加工ー販売までを一体化。
農業の発展、地域振興を目指す

「6次産業化」とは、「1次(生産)」×「2次(加工)」×「3次(流通)」を掛け合わせた産業という意味で、農業経済学者の今村奈良臣さんが提唱した造語です。実は農林水産省の施策として法律化されており、2011年に「六次産業化・地産地消法」(通称)が施行されました。国に総合化事業計画を提出し、認定事業者になると、資金の援助などの支援が受けられます。また認定事業者であってもなくても、6次産業化に取り組む事業者は国で登録されている「6次産業化プランナー」によるサポートを受けられます。
具体的な6次産業化の例としては、「トマト農家が自分たちでトマトジュースを作り販売する」「農家が直売所やファームレストランを始める」などが分かりやすいでしょう。なお、全てを自分たちの手で行わずに加工や販売を別業者と協働するケースもあります。必ずしも一つの事業者が1次、2次、3次まで全て担わなくても、共通した目的のもとに事業が進められていれば、6次産業化の取り組みといえます。
これによってどのようなメリットがあるかというと、「生産者の所得が向上する」「中間コスト削減」「農作物の生産拡大を目指せる」「新たな雇用が生まれる」「地域に交流が生まれる」などが挙げられます。しかしこれはどちらかというと生産者側としてのメリットですが、実は私たちの生活にも影響はあるのです。

どこに価値があるかを知り、選ぶことで、
日本の農林漁業者の応援につながる

全国の生産者や自治体支援を行う「エモーショナルトライブ」代表で、6次産業化プランナーの井上嘉文さんは、「6次産業化によって私たちの食生活も変わる」といいます。現在の日本は廃業する農家が後を絶たず、食料自給率も37%(2018年度、農水省発表)にまで落ちています。「日本が輸入食品だらけになった時のことを想像してみてください」と警鐘を鳴らします。「6次化により離農に歯止めをかけることができれば、輸入食品に頼らなくて済むようになり、顔の見える生産者が作った安全なものを口に入れる機会が増えます」。

「何に対価を支払うか」を考え、選ぶ目を持とう
ただ、そういった商品は「値段が高い」と敬遠されがちな面もあります。「それは商品の魅力がしっかり伝わっていないからです」と井上さんは指摘します。
「小さな生産者はコスト度外視で良いものを作ろうと努力しています。ただ、多くの事業者は、ものを作ることをゴールと捉え、売るための戦略まで立てられていないケースが多い」。最近ではインターネットなどを通じ、作り手が広くメッセージを発信することが容易になりました。それにより消費者は、自分の口に入れるものに対して、どこに対価を払うかの価値判断をする機会が増えたといえます。「商品を売るのも買うのもコミュニケーション。生産者が6次化で作った無骨な商品は無添加でピュアなものばかりです。そういった商品の裏側にあるストーリーやこだわりを理解して買うことが、生産者の励みになり、『もっといいものを作ろう』という意欲につながります」。

6次産業化で大切なのは、一方通行ではなく双方向でお互いメリットを生み出すこと。地域の農林漁業者の発展は日本の食の安全にもつながります。私たちも、身近にある6次化の商品を知り、まずは手に取ることから始めてみましょう。

いろいろな6次産業の取り組み

全国の認定事業者は2487件(2019年9月現在)。認定を受けていなくても、1次×2次×3次を一貫して行っていれば「6次産業事業者」といえます。昔ながらの直売所から動画配信まで、多岐にわたる取り組みがあります。

独自の自然療法で高糖度のメロンを栽培

小野農園(夕張市)

今年85歳になる小野一一(かずいち)さんは、昔ながらの米ぬかをベースに木炭を配合するなど土づくりから研究。「ルピアレッド」というメロンの品種を、より高糖度で日持ちがするよう独自の農法で育て上げ、まだ「直売」という概念が浸透する50年以上前に農園直売所をオープン。「夕張だけど『夕張メロン』じゃないメロン」として固定ファンをつかんでいます。4年前から弟子の元澤洋さんが加わり、メロンジャムやカタラーナといった加工品を考案したほか、メロンの食べごろを測定できる器械を導入するなど新事業にも積極的。特産の長芋を練り込んだそばの生産もスタートし、夕張のPRに力を入れています。

「もっとおいしいメロンを」と今なお研究に励む小野さん(左)と、元澤さん

メロンジャム880円。メロンカタラーナ1,540円は「みれい菓」とのコラボ商品。長芋入りの「いつもおさむのそば」550円

化学肥料に頼らず、低農薬で栽培するメロンは特別栽培認証も取得。販売は毎年6月末〜8月末ごろ

DATA
夕張市紅葉山21 TEL 0123-58-3087
商品購入は公式HP(https://www.onofarm.jp/)より。

安く、新しく、珍しい野菜にも出会える直売所

農家の直売 とれたす。(札幌)

写真の木田和良さんをはじめ、篠路地区を中心に8農家が作った野菜を販売。自分で売り値を設定できるため、市場価格に左右されず、安定価格で提供できるのが利点です。また少量でも卸すことができることから、農家が新品種にもチャレンジしやすく、いつ来ても定番から珍しい品種まで並んでいるのが魅力。最近は乾燥野菜の加工販売にも力を入れています。

低温でじっくり乾燥させた野菜は旨みが凝縮。トウモロコシ、トマト、タマネギなど1袋300円〜400円

DATA
札幌市北区篠路町拓北82-16 TEL 011-771-3536
営業時間/10〜14時、15〜18時。水曜定休
今年の営業は10月31日(木)まで
https://www.facebook.com/toretas.jp/

シェフの理想を形にしたファームレストラン

レストラン アグリスケープ(札幌市)

円山のレストラン「SIO」の姉妹店。オーナー佐藤陽介さんが「自分で使う食材を自分たちで育てたい」と、縁のあった小別沢にオープンしました。2haの畑で野菜を育てるほか、養鶏も行い、卵と鶏肉も生産。最近は豚の飼育も始め、近い将来は養豚、加工まで自前で行う計画です。それらの素材を使った料理をランチ4,400円〜で提供。採れたての野菜や総菜を販売するスペースもあります。


ケチャップや南蛮味噌などの自家製調味料、総菜、シャルキュトリー(肉加工品)が並びます

黒ニンニクも自家栽培、自家加工。無農薬で1,296円と相場より安く、リピーターの多い商品

DATA
札幌市西区小別沢177 TEL 011-676-8445
営業時間/12時10分~14時(ラストオーダー13時)、17時40分~21時30分(同19時30分)。
直売所は10時〜16時30分。不定休

動画や加工品でビーツの魅力を発信!

Sweet Beets Box(愛別町)

愛別町は2018年から地元の農産物を生かした加工品開発に取り組んでいます。特産品はキノコですが、実は町産ビーツの品種は糖度が高く、調理にも向いているのだとか。そこで6次産業化プランナー井上嘉文さんとタッグを組んで「Sweet Beets Box」というブランドを立ち上げ、ホテルやレストランでのコラボレーションメニューの提供、SNSを通じた販売などを実施。今年8月には公式ラップソングと町のPV動画を制作しました。町民が「泥くさくない! 苦みなんてない!」とキレのよいラップでビーツの栄養価や調理法をPRしており、つい見入ってしまう内容です。
11月には無添加のビーツの水煮パックを発売。

愛別町産のビーツ。甘くシャキッとした食感が特徴。じっくり煮るとホクホクと甘くなります

子供たちがオリジナルラップとダンスでビーツの魅力を伝える動画。キャストは全員町民です

ビーツの水煮パック。「今までになかった」と料理人からの引き合いも多いそう

DATA
愛別町本町179 TEL 01658-6-5111(愛別町ビーツ振興会)
動画視聴や商品購入は「愛別町特産品サイト」(https://aibetsu-shop.com/)より

あれもこれも6次産業化商品

野菜、畜肉、乳製品、ワインなど身近な商品からドッグフードまで、「これも6次化商品?」と驚くようなものも。気になる商品があったら試してみてください。

ふらのッち
早くから6次化に取り組み、ポテトチップス工場を建設。ポテトチップス専用品種の馬鈴しょを使い、素材の味を感じられる薄味に。うすしお味、のり塩 各162円(60g)。ほかに北海道限定のコンソメ味、ガーリックもあります。

<問い合わせ先>
JAふらの 富良野市朝日町3ー1
TEL 0167-22-0101

ひこま豚
浅さんがヶ岳麓の森町で作っているから「ひこま豚」。驚くほど脂が甘く、しっとりした肉質のSPF豚です。生ハム(1,080円)、シューマイ(972円)、ぶたまん(378円)など加工品も各種。「ひこま豚食堂&精肉店 Boodeli」(札幌市清田区美しが丘3ー1ー7ー12)でも扱っています。

<問い合わせ先>
ひこま豚 森町赤井川139
TEL 01374-7-1456

紅甘雪の焼きいも
2017年にブランド化した、香西農園でしか栽培していないサツマイモ「紅甘雪」。ねっとりした甘さです。焼き芋は「いもや北18条店」などで味わえますが、レトルト商品の通販も。540円(200g)。

<問い合わせ先>
香西農園
滝川市北滝の川1770ー5
sumizuenjoylife@gmail.com

トロケッテ・ウーノ
放牧による生乳の価値を高めて販路拡大しようと、ミルク豆腐「トロケッテ・ウーノ」(380円)などを開発。牧場併設カフェもオープンし、新たな交流拠点に。札幌パルコ地下「みるくsan」でもミルクやソフトクリームを味わえます。

<問い合わせ先>
宇野牧場 天塩町字サラキシ2015ー2
TEL 01632-2-3218

牧家の白いプリン
2006年から地域の酪農家と連携し、日本に誇れる地域限定牛乳「だて牛乳」の生産をスタート。その牛乳を活用した風船型の「牧家の白いプリン」(右、4個883円)は、お土産としても人気。新商品「牧家のほうじ茶ラテプリン」(左、2個540円)も。

<問い合わせ先>
牧家 伊達市松ヶ枝町65ー11
TEL 0120-130-733

てるちゃん味噌
江別市美原地区の7農家が集まり、2006年に農業法人を設立。自社製米麹、自家栽培大豆、江別産小麦ハルユタカなどで作った風味豊かな味噌は入荷を心待ちにするファンもいるほど人気だとか。昆布入りもあります。

<問い合わせ先>
農業生産法人 輝楽里 江別市美原225
TEL 011-384-7146

八剣山ワイン
自社農園産ブドウを含め道産のブドウやリンゴなどを使ったワインを醸造。道開発局の協力のもと、豊平峡ダムサイトにあるトンネルをセラーとして熟成した「ダム熟成ワイン」(写真)など、ここにしかないワインも。

<問い合わせ先>
八剣山ワイナリー
札幌市南区砥山194ー1
TEL 011-596-3981

有機トマスコ
有機トマトを乳酸発酵させ、国産唐辛子を加えて作った発酵辛味調味料。母体は建設会社で、環境ビジネスへの取り組みからトマト栽培を始め、「市場価格に振り回されないトマト商品を」と開発。鍋や味噌汁に入れても美味。742円(60g)。

<問い合わせ先>
キセキ・コンダクトカンパニー
旭川市7条通15ー71ー13
TEL 0120-332-178

元気!ドッグフード
農薬や化学肥料に頼らない有機農法は形の良い野菜を作るのが難しく、毎年多くの作物が廃棄処分に。これらを活用した有機ドッグフード。「有機にんじん&えぞ鹿肉ジャーキー」など4種で、各540円。

<問い合わせ先>
大塚ファーム
新篠津村第36線南42
TEL 0126-57-2573
http://npootsuka.com/

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