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【多摩人に聞く】第57次南極地域観測隊 調理隊員・渡貫淳子さん

南極で夢を実現した主婦隊員
話題の「悪魔のおにぎり」の舞台裏

2015年12月から1年4カ月間「第57次南極地域観測隊」の調理隊員をしていた渡貫淳子さん。南極で夜勤の隊員たちに作った夜食のおにぎりが、帰国後「悪魔のおにぎり」として注目されている。

第57次南極地域観測隊 調理隊員・渡貫淳子さん

憧れの白い大地へ

南極へ行くきっかけは、新聞で見た一枚の写真。その後、映画「南極料理人」を見て「この人たちの食事を作りたい!」と思いが強くなった。南極地域観測隊員(越冬隊)は医療、環境保全、観測支援など一部の業務は一般公募している。「調理隊員」も一般公募していると知り一念発起。経験者に話を聞き、主婦業のかたわら準備し、チャレンジしたものの2年連続不合格だった。
渡貫さんは、国立のエコール 辻東京を卒業後、同校職員として日本料理の指導経験があり、調理や食材の管理には自信があった。とはいえ、職場は南極。時にマイナス30度にもなる極寒の地で働くには、体力も必要。背水の陣で挑んだ3度目に念願の南極行きの切符を手に入れた。

「悪魔のおにぎり」の誕生

南極にある昭和基地での調理は、朝・昼・夕食とおやつに夜食。寒い場所での作業はカロリーの消費も激しい。健康の維持はもちろん、隊員にとって食事は楽しみの一つだ。限られた材料で、バラエティに富む献立を作り、隊員の誕生日には故郷の料理で祝う。そんな中、あまりもので作ったおにぎりが好評だった。「天かす入りなので、最初は私の名前をもじって“(ワ)タヌキのおにぎり”って言っていたんですけどね」。夜食に食べた若い隊員が気に入り「悪魔のおにぎり」とネーミング。帰国後にテレビ番組で紹介されると主婦たちが次々に「悪魔のおにぎり」を作ってSNSにアップ。コンビニで同名のおにぎりも販売され大ヒット。「食材が豊富な日本でこんなに人気になるなんて」と驚いた。

帰国後の変化

現在は、食品メーカーに勤務しながら、南極の魅力を伝える活動も行う渡貫さん。帰国して変化したことを聞くと、「基地では私の場合、消耗品も含めて段ボール6個分で1年以上生活していたので、自宅に帰ったらモノの多さに驚いて、家中を断捨離しました」。そして、「今はもう慣れましたが」と前置きして「実は、帰国後にスーパーのお総菜売り場の前で泣いちゃったんです」とも。「閉店前のスーパーにお総菜がいっぱい並んでいるのを見て、この後、これが全部破棄されるのかなと思ったら涙が止まらなくなって。お総菜売り場で泣いている主婦ってヘンですよね(笑)」

南極の魅力を広めたい

今年1月、書籍「南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる」(平凡社)を出版。南極メニューや「悪魔のおにぎり」のオリジナルレシピも掲載されている。他にも、失敗談や女性ならではの悩みなど、生活してみなければ分からない南極での暮らしが興味深く書かれている。
「帰国後の講演会には、タロ・ジロを知る世代の方が多くて。今でも毎年南極に観測隊が派遣されているのを知らない人も多いんです。オーロラやペンギンだけではない”南極の魅力”を、もっと多くの人に知ってもらえたら」

取材・文/磯貝久美子

【渡貫淳子さんプロフィール】

1973年青森県生まれ。八王子市在住。
エコール 辻 東京を卒業後、同校日本料理技術職員を務める。結婚、出産を機に一旦現場を離れるも、その後、飲食の仕事に復帰。2015年12月から2017年3月まで「第57次南極地域観測隊」の一員として調理を担当。「悪魔のおにぎり」の考案者。現在は食品メーカーに勤務。2019年1月、「南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる」(平凡社)を出版

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